諸星大二郎 異界への扉 [展覧会]
先日三鷹市ギャラリーにて諸星大二郎展を見てきました。
人の入りはそれ程多くなく快適にゆっくりと鑑賞してきました。この展示会の観覧は最近ではかなり楽しみにしていたイベントでした。諸星先生の作品は遥かまだうら若き20代の頃漫画雑誌で読者ファンになっていました、その頃から印象深く注目していた作家先生です。この先生の作品は日常と異界をテーマに不可思議な日常を空想的に描いています、また考古学にも造詣が深く古墳時代の日本や中国先史時代をテーマにしたりインド哲学の世界を開陳したりと少年漫画としてはかなり難しいテーマを取り上げています。深層的でミステリアスな処が好きでした。
この先生が作品発表した時代は70年代が中心と記憶しています、この時代はPCやスマホ等はなくこのような準専門的な事柄でさえ百科事典や図書館で調べなくてはならない手間のかかる時代でした。ですから漫画で書かれていることを調べる人など皆無でしょうから、物語にかなり信憑性があると信じていました。その不可思議さが魅力だったかも知れません。先生の作品で印象的というか好きな作品は「暗黒神話」「孔子暗黒伝」「海神記」等でした、中でも「暗黒神話」で語られるブラフマン・アートマンの概念は今でも難解と思っています。「海神記」で語られる安徳天皇の話しはかなり印象に残ったのか後に赤間神宮に参詣し、鳥居から関門海峡を眺めて確認までしました。しかし語られる内容には不思議な説得力があります、安徳天皇の受難はかなり悲哀を感じますが安徳天皇を抱いて入水した二位の局の無念さが関門海峡に眠っているという感覚は肌感覚で理解できました。
今回の展示会で残念だったのは、このようなテーマに取り組んだきっかけとか先生の取材力やらバックボーンにあるものを炙り出して欲しかったです。作品紹介や解説は今の時代では幾らでも知りようがあるからです。
こんな事を考えていたら思い出してきました この時代は駅での待ち合わせも相手との約束を頼りにするものですから駅で3時間待ったがついに現れなかった等はザラでしたし、また駅に電話して行けない旨を伝えてもらったり駅アナウンスを聞いて相手に電話したり、駅掲示板で待ち合わせ場所を変えたりと もの凄いアナログ待ち合わせでした。このような人と会うのも不便な時代ですから都市伝説や異界への扉もすぐ後ろにあったのです。壁の向こうに現実でない白昼夢のような世界が広がっていたのです。
70年代の待ち合わせの場所で良く使われた「新宿 紀伊国屋書店前」 十数人の若者が相手を待っています、一人二人と相手が来てくれて待ち合わせする人が順々に減っていきます 行かないでくれ!俺を一人にしなでくれ!
待ちぼうけ男になりたくない!男のやるせない思いが凝縮していました!
そのような不幸なエネルギーが渦巻いていたのです。
コメント 0