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歴史探偵 半藤一利展 [展覧会]

前回より随分と時間が経ってしまいました。

Scan20230907-2.jpgここ数ヶ月入院、体調回復に時間がかかってやっと一息ついた処です。先日九段下を通りかかったところ昭和館でこの企画展が行われていました。人物として敬愛している作家でしたので早速出掛けた次第です。全体1時間程度で回れる内容の無料企画展でした。著作物と人物史そしてDVDと内容に見応えがあり、特に際立つのは当時の有名作家との交友関係やそこから学んだ多くのことが作家としての著作物に結実していることでした。最後に半藤先生の著作物一覧を貰って帰り、この著作物一覧から「ソ連が満州に侵攻した夏」を注文しました。

さて購入したこの作品をすぐに読み始めましたが自分の知らなかったことが多く掲載されていて驚きました。この作品は第二次世界大戦の最終場面を描いた力作で、この本を書くにあたって膨大な資料を参照しなければ書き上げることは出来なかったと思われる労作です。日本が降伏して戦後秩序が定まる最初の一歩と降伏に伴う最後の混乱も具体的に描かれています。幾つものの何故が解明されていきます。日本の戦争が始まる1931年から満州事変・日中戦争・太平洋戦争はその始まりから真珠湾に至る時代まで映画や小説等で局面毎に見たり聞いたりしてきました。しかし降伏時の状況はすんなり戦争集結して平和が訪れたと 20年8月15日を境に戦争は終わったという印象が強くありました。中国残留孤児はこの時逃げ遅れた人達の話しだと思い。北方領土は戦争終結時にソ連に捕られたと シベリア抑留は捕虜にあった人達の不幸と しかし全ての真実をこの本から教えてもらいました。

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前首相が執念のように取り組んだロシアとの北方領土交渉 一方的に略取された、戦争終結時に占領されそのまま帰属された 北方領土がロシア領になった理由がソ連の理不尽なる振る舞いと思ってきました。

しかしこれは既に1945年2月の「ヤルタ会談」で米英ソの首脳によって約束された戦後処理策だったのです。米国ルーズベルトはソ連参戦を懇望していて、その取引材料になっていました。更に日本政府もソ連を通じて和平工作を行っていきます。沖縄戦終了後からこの工作に政府はのめり込んで行き、最終的には北方領土割譲は政府自体も取引材料に一考していたのです。ソ連スターリンは参戦条件に北海道分割統治までアメリカに提案しています。このような国際政治の複雑な秘密交渉を全く認知していない日本政府を無知蒙昧と断じています。この時の日本政府の最大課題は国体護持でした。領土等は考えの外にあるのです。片や日ソ中立条約を結んでいるスターリンは条約違反の見返りと大義名分を求めていました。米国の原爆投下がポツダム宣言受託を促進し、スターリンは焦ったのです、そして8月10日中立条約を無視してソ連は一方的に参戦し世界分割統治に参加したわけです。この時守るべき関東軍は前線部隊を置き去りにして一早く撤退してしまい悲劇が起こったのです。一番最初に引き上げる事が出来たのは軍人軍属の家族だったと言われています。

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最後に本文から引用します「日本は・・・・ソビエト連邦の仲介で全般的和平が実現するなら、ソビエト連邦の要求をすべて受け入れる と、最高戦争指導会議がきめていたともいう」・・・「ソ連が満州に侵攻した夏」から ロシアの領土感覚はニコライ王朝からの遺訓がいまだに生きているのかもしれません 

ウクライナへの侵攻もそのラインにあるのかな 

かつての日本と同じ轍かもしれません

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諸星大二郎 異界への扉 [展覧会]

先日三鷹市ギャラリーにて諸星大二郎展を見てきました。

DSC03294.jpg人の入りはそれ程多くなく快適にゆっくりと鑑賞してきました。この展示会の観覧は最近ではかなり楽しみにしていたイベントでした。諸星先生の作品は遥かまだうら若き20代の頃漫画雑誌で読者ファンになっていました、その頃から印象深く注目していた作家先生です。この先生の作品は日常と異界をテーマに不可思議な日常を空想的に描いています、また考古学にも造詣が深く古墳時代の日本や中国先史時代をテーマにしたりインド哲学の世界を開陳したりと少年漫画としてはかなり難しいテーマを取り上げています。深層的でミステリアスな処が好きでした。

DSC03033.jpgこの先生が作品発表した時代は70年代が中心と記憶しています、この時代はPCやスマホ等はなくこのような準専門的な事柄でさえ百科事典や図書館で調べなくてはならない手間のかかる時代でした。ですから漫画で書かれていることを調べる人など皆無でしょうから、物語にかなり信憑性があると信じていました。その不可思議さが魅力だったかも知れません。先生の作品で印象的というか好きな作品は「暗黒神話」「孔子暗黒伝」「海神記」等でした、中でも「暗黒神話」で語られるブラフマン・アートマンの概念は今でも難解と思っています。「海神記」で語られる安徳天皇の話しはかなり印象に残ったのか後に赤間神宮に参詣し、鳥居から関門海峡を眺めて確認までしました。しかし語られる内容には不思議な説得力があります、安徳天皇の受難はかなり悲哀を感じますが安徳天皇を抱いて入水した二位の局の無念さが関門海峡に眠っているという感覚は肌感覚で理解できました。

今回の展示会で残念だったのは、このようなテーマに取り組んだきっかけとか先生の取材力やらバックボーンにあるものを炙り出して欲しかったです。作品紹介や解説は今の時代では幾らでも知りようがあるからです。

DSC03136.jpgこんな事を考えていたら思い出してきました この時代は駅での待ち合わせも相手との約束を頼りにするものですから駅で3時間待ったがついに現れなかった等はザラでしたし、また駅に電話して行けない旨を伝えてもらったり駅アナウンスを聞いて相手に電話したり、駅掲示板で待ち合わせ場所を変えたりと もの凄いアナログ待ち合わせでした。このような人と会うのも不便な時代ですから都市伝説や異界への扉もすぐ後ろにあったのです。壁の向こうに現実でない白昼夢のような世界が広がっていたのです。

70年代の待ち合わせの場所で良く使われた「新宿 紀伊国屋書店前」 十数人の若者が相手を待っています、一人二人と相手が来てくれて待ち合わせする人が順々に減っていきます 行かないでくれ!俺を一人にしなでくれ!

待ちぼうけ男になりたくない!男のやるせない思いが凝縮していました!

そのような不幸なエネルギーが渦巻いていたのです。

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