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ロビンソン・クルーソー [本]

Robinson Crusoe 英語ではこのように表記されます。突然にこのお題は唐突でしたが、児童文学の傑作選に現在チャレンジ中でして 何故今児童文学なのか? 少し童心に戻ってやすらぎたいと思ったのです。しかし発見も多くありました。

この作品は1719年ダニエル・デフォー(英国の作家)によって書かれたものでして いわば18世紀初頭の冒険小説ということになります。ウィキペディアによると1665年ペスト大流行後に書かれたもので、デフォーも少年時代ペスト流行を経験しています。今とよく似た世相のようで面白いです。書名は「福音館 古典童話シリーズ ロビンソンクルーソー」立派な装丁本です。DSC_0108.jpg

あらすじ 主人公ロビンソンは両親の訓戒に反して冒険心に任せて友人と共に航海に出ます。本人いわく ここで辞めて置けば良かったという後悔を繰り返しながら新たな冒険にでてしまいます。大航海時代ですから冒険=貿易と大金持ちが目標となります、勿論大金持ちになり奴隷になりと天国と地獄を繰り返します。少しお金が出来ると次の航海に出ますが、航海途上で海賊に遭遇して奴隷にされます。この時間軸が今と違います彼は2年間 奴隷にされていますがチャンスを見つけて脱出します。この脱出の航海も凄いです、アフリカを海岸伝いに逃げていきます、途中ライオンや豹を狩猟して毛皮にします、これを商品にして脱出していくのです。まるで映画「パピヨン」のような世界です。

この脱出劇の後 ブラジルに渡り農場を経営します。それなりに裕福になり大農場を経営するまでになりますが、黒人奴隷の売買を目的としてまたも航海に乗り出します。この航海で船が難破、無人島に流れ着きます。この船での唯一の生存者となり、無人島での孤独な生活が始まります。彼が運が良かったのは船の残留物を引き上げることに成功したからです。これが無ければこの後の生活はあり得なかったと随所に出てきます。そして28年間の孤独な無人島暮らしに終止符がやってきます。この島は食人種の島だったのです。向い側の大陸から食人がやってきては捕虜を「ツマミ」にして大宴会を開く島だったのです。しかし船から引き上げていた鉄砲がここで役に立ち、食人種を追っ払い島の帝王として君臨するのです。本人はこの島でのたった一人の人間にして国王であると夢想します。そして話しはいよいよ脱出劇へと進んで行きます。

1a.jpgどのように脱出したかは本をお読み下さい。この島の大まかな位置ですが文中ではブラジル北部のオリノコ川河口付近 トリニダード島周辺の「絶望の島」と記されています。小説の2/3ぐらいは無人島での生活に終始します。読んでいるうちに「グアム島の横井さんやルソン島の小野田さん」もこういう生活だったろうと頭に浮かんできます。久々に単純で面白かったというのが感想です。

作家デフォーはこの小説が当たり大金持ちになります、本人はお金が欲しくてこの小説を書いたと後に言ってます。図に乗って続編を出しましたがこちらはあまり芳しくなかったようです。脱出したロビンソンはこの後再度この島に訪れていることになっています。

この小説を今映画にしたら凄いアクション冒険映画になるだろうと勝手に想像しています。

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中里介山 大菩薩峠 明滅するユートピア [本]

先日無事ワクチン1回目接種を終えました。これで幾分リスクが低下したと勝手に思い込んでいます。

P1170849.jpgさて、この展覧会が見たくて40年ぶりぐらいに日本近代文学館に行ってきました。もっと大きな展示室で常設展とかあるのかと想像していましたが、通常で言う小展示室という感でした。併設で川端康成展というか「伊豆の踊り子」特集のようなものが展示されていました。


大菩薩峠展の方ですが作品を理解する上では分かりやすい展示となっていて面白かったです。印象的だったのは主人公「机 竜之介」の人物像はその後の時代劇主人公にかなり影響を及ぼしたことです。先日来の追悼特集になっている田村正和さんの当たり役「眠り狂四郎」はまさに机竜之介そのもののように感じてしまいます。

武州裏街道とは青梅街道の別名のようです(表街道は甲州街道)この作品の舞台に青梅街道が取り上げられています、中里介山の生まれが今の羽村市だったことに由来しているのも意外でした。介山先生が描いたこの作品は途中から主人公が多数現れて、登場人物の人生を追っていく展開となります。これがこの作品理解を難しくしていますが、何十年もかけて書き続けている訳ですから何となくその心境変化が理解できます。もう一つ興味深かったのは介山先生が著作権や映画になった時の演出にものすごいこだわりがあったことです。この先生は自分の思い通りにならないと喧嘩して差し止めてしまいます。それだけこの作品に対する思い入れや大切さが深かったのでしょう、思いがよく伝わってきます。この作品は当時の最高エンターテイメントだったということもわかりました。

映画、演劇と繰り返し上演され、なんと机竜之介の秘剣「音無しの構え」は高野佐三郎や中山博道によってオーソライズされたようです。高野佐三郎や中山博道は剣聖とされ、現代剣道を確立した偉人と言われています。「音無しの構え」は音を立てずに相手を打ち取る中西派一刀流の究極の剣技です、現代剣道でもこの技は至高の技とされています。誰でも出来る技ですが思うように使うことが出来ない至難の技 要は狙って出来る技ではなく正に「無」の境地の時現れる 「天から降りてくる技」だと思います。P1170856.jpg

或る日、警視庁剣道OBの大先生から面白いことを教わったことがあります、「昇段の試験では一切打つな、今日は1本も打たないぞと心に決めて試験を受けろ」 これは奥深い言葉です 1本も打たなければ試験になりません。1分間しかない制限時間の中でどういう心で臨むのでしょうか この逆説的な心境にこそ奥義があるようです。きっと「音無しの構え」とはこのような心境の中でしか出ない技なのかもしれません。


もう1回ワクチンが待っていると思うと複雑な心境 何故なら2回目の方がキツイから!

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