小説たび巡りⅡ [本]
松本清張の作品には日本中の鉄道旅行が網羅されているのでそこから始めます。前回は三浦半島観音崎を舞台にしました。
今回は代表作「点と線」から 「東京駅13番線ホーム(横須賀線ホーム)から14番線、15番線が見える」というこのシーンはこの小説の要となるシーンであり、また今や廃止されたブルートレインの出発風景です。15番線ホームに九州行き特急「あさかぜ号」が停車している風景を登場人物に「あれは博多行き特急、あさかぜ号だ、」と語らせています。(作品でこのシーンを実際に触れて下さい。)
東京駅の九州方面長距離列車の出発ホームには見送り客が溢れ、一種独特の旅情が醸し出されています。私も40数年前にブルートレインに乗車した思い出があります。若い時分でもう記憶は霞んでしまっていますが断片的記憶を辿って・・あさかぜ号はこの小説の舞台ですが、東京駅発18:50頃だったと思います。博多着が昼前になり博多が目的地の方にはいいですが、博多より遠くの旅行の場合はもっと早く着く列車に乗りたいところです。確か私が乗ったのはみずほ号かさくら号だっと思います、これは15:30頃の東京駅発です。博多には朝着くと記憶しています。このような寝台列車に乗ったのは初めての経験でした、夜遅くまで起きて通路に備え付けられている折り畳み座席に腰かけて、どの辺りを走っているのか暗い窓を覗いていたことを記憶しています。寝台ベッドで寝ることへのワクワク感も楽しみの一つでした、しかし到着する頃の朝がたには不眠感が結構ありました。2段式のベッドで1段目は座席シートになるので線路の音が夜通し聴こえて中々眠れないからです。
最後に福岡県香椎の場面が出てきますので紹介します。香椎駅へは博多から鹿児島本線で行く方法と西鉄電車で西鉄香椎駅に行く方法と2通りあります。国鉄香椎駅へは博多から門司方面に3駅10分で着きます。(わざわざ国鉄を使用しました。)両駅は近く、小説でも歩いて5分という距離が推理の核心になります。香椎から山側が香椎神宮方面、海側は博多方面です。殺人事件の舞台 香椎の海岸は風光明媚な所と書かれ、万葉集 大伴旅人の歌「いざ子ども香椎の潟に白妙の袖さえぬれて朝菜摘みてむ」を引用してます。右側には海の中道の先 志賀島が見え、左側には能古島が見えると書かれています、出掛けた事がありますが今はもう能古島は見えません、博多湾の向こうにアイランドシティーの高層ビル群が聳え立っています。
「点と線」は東京駅の風景と香椎の海岸が舞台となる作品です、東京駅も香椎の海岸も今は往時の風景はありません。前掲みずほ号乗車時の目的地は志賀島でした。志賀島到着時に公衆電話から家に無事到着電話をしましたが10円玉が凄い勢いで落ちていき驚きました、それ程遠いところだったんです。往時の風景を偲びながら現代を旅したいところです。
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