歴史と視点 司馬遼太郎 [本]
前回「ノモンハンの夏」で何故司馬先生がこの題材を取り上げなかったか?ということについて次回回しにしました。その後この本を読んで少し納得しましたので取り上げてみました。
「歴史と視点 ー私の雑記帳ー」昭和55年初刷りのエッセイです。司馬先生は太平洋戦争に従軍し戦車隊の小隊長だったようです。主に中国大陸に従軍したようで、その自分の戦争体験と雑感を綴ったエッセイ集です。
まず戦車について詳しく語っています、戦争に出たのは徴兵によってですが徴兵検査数日後の通知書に「戦車手」と書かれていたそうです。友人がその通知書をじっと見て「戦車ならあかんなあ、100%あかんなあ」と気の毒そうに言ったそうです。
戦車を通して大日本帝国の軍人達の愚劣さを書いてます、例えばおもしろい事に「戦車」は戦車であるという論法がまかり通っていたと言ってます。要するに敵の戦車と自軍の戦車の性能格差が戦局を左右することは普通のことです。海軍は世界最強の戦艦をつくりました、それは戦艦同士の戦いでは絶対に負けない戦艦をつくるという設計思想の元に辿りついたものです。しかし陸軍は敵が戦車を出してきたならこちらも戦車を出せという互角論法に終始します。性能は関係ありません、実際に戦車戦となったノモンハン事件では敵戦車の優位によって自軍戦車は圧倒され、歩兵による挺身攻撃で凌ぎます。この陸軍の物より精神が圧倒するという考え方が太平洋戦争中ズーっと続き悲劇が繰り返されました。
最後にこの本では「人間が神になる話」という章で締めくくっています。日本の歴史上天皇が神であったことはないとしています。しかし昭和のこの時期この一連の事件や事変を引き起こした陸軍の高級将校達は要は統帥権をたてにとって天皇の大権を濫用して国家を滅亡に追い込んだと結論しています。それは天皇を神にすることで出来たことだと言ってます。その後昭和二十一年一月一日「天皇の人間宣言」が詔書されます。
これは陸軍高級将校なかんずく陸軍参謀本部による政治の壟断であるというのが司馬先生の結論のようです。
したがって書かなかった理由はバカな軍人を小説にしてもしょうがないというところですかね。
詳しく知りたい方は本を読んで下さい。
暑い夏も到頭終わりだなあー!
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