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松本清張全集3 [本]

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印象に残った作品を今回は紹介したいと思っています。
清張全集巻13「黒い福音」です。巻13は他に「アムステルダム殺人事件」と「セント・アンドリュースの事件」2編が収録されています。更に付録のように「スチュワーデス殺し」論が一緒に収められています。
さて、「黒い福音」の内容について
ザット簡単に粗筋を紹介すると 武蔵野のカトリック教会「グリエルモ教会」の神父の怪しげな行動と戦後間もない日本への食料物資援助(ララ物資援助)に絡んだヤミ物資取引、これらの大元にカトリック教会が関係していると探索した警察の捜査。真偽不明で終わるヤミ物資取引事件、それから数年後杉並区善福寺川にてEAAL航空スチュワーデスの他殺死体が発見される。国際密輸組織とスチュワーデス、その背後に深く関わるカトリック教会の神父達。犯人と思しき神父を追いかける警察・新聞記者達と教団の攻防。こんな感じですかね。
どこが面白いのか?
まず聖職者である教会神父の犯罪・日本の国家中枢にまでパイプを持つ教会の浸透力・その教団が現在巨大教団に成長していること。そして何とこの事件は昭和34年実際に発生した殺人事件を題材に清張先生が推理していること。
実際に起きた事件とはBOACスチュワーデス殺人事件です。戦後の未解決事件の一つで平塚八兵衛も捜査員です。ショッキングな事件だったのはこの時代の国際線スチュワーデスは圧倒的なステータスだったのです。
事件の概略は昭和34年3月10日、杉並区大宮町 宮下橋から下流15m程の処で女性死体が発見され当初自殺と疑われたが慶応病院で解剖した結果扼殺と判明したのです。
キリスト教が日本に伝来したのは1500年代、ここから布教活動が始まりますが豊臣秀吉や徳川家康は禁教令を出して迫害します。では何故迫害したのか?キリスト教宣教師はポルトガル・スペインの世界征服戦略の先兵だったからです。禁教令が無ければ日本はインカ帝国のように植民地になっていたのでしょう。その心底が彼等為政者には非常に危険な臭いを感じ取ったとという処だと思います。
この小説からも彼等聖職者の実態と事件にかかわらず成長していく巨大教団と国家権力にまで浸透していく様は戦慄に値します。小説の結末は犯人と思われる教会神父(外国人)を重要参考人とした警察は逮捕寸前で俗に言う上層部の圧力がかかります。この時政府高官が欧州外遊に向かう総理に助言したのです、女一人の死で国際的信用を落としてはならないと。彼は敬虔な信者だったからです・・・・・ミステリーなのでこれぐらいにして。
その後小説ではなく実際の事件では BOAC(ブリティッシュ・エアウェイズ)は社員が国際密輸事件に関わったとして従業員30人前後を処分しています。そして実際の教団は何事もなかったように現代に至り、今では学校経営や教会運営で社会から尊崇されています。だいぶ前に当時の有名アイドル歌手が結婚式を挙げた教会もこの教団の教会です。キリスト教聖職者の福音・施し・自己犠牲等の神々しい言葉の数々の本心を鋭くえぐる一編です。
見上げたもんだよ屋根屋の・・・・!
 
 

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